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地獄は頭の中にある。『虐殺器官』感想・紹介

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伊藤計劃『虐殺器官』

近未来の戦場を舞台にしたSF。

米軍特殊部隊に所属するクラヴィス・シェパードは、世界各地の大量殺戮の陰に存在する謎の男、ジョン・ポールを追う。

ジョンの愛人ルツィアに出会ったクラヴィスは、彼女に惹かれるが……

虐殺器官とは、そしてジョンの目的とは何か。

クラヴィスはどのような結末を選択するのか。

『虐殺器官』ネタバレなし感想・紹介

一人称によって語られる戦場

物語は主人公であるクラヴィスによって語られます。

これにより、読者はクラヴィスと行動を共にしているかのような臨場感を味わうことができるでしょう。

映画や文学の知識が豊富であり、母親から「ことばにフェティッシュがある」と評されたクラヴィスが語る世界は、繊細で緻密です。

知識と知性にあふれ、突入時にはリーダーも務める彼ですが、時にどこか幼く、人間として成熟しきれていない面を見せます。

そんな彼の危うさにイライラしたり不安になったりすることで、読者はより物語に没入するのではないでしょうか。

そして発達したテクノロジーに対して成熟できない人間という構図は、近い未来、もしくはすでに今この時を表しているのかもしれません。

物語を彩る魅力的な設定

『虐殺器官』の世界は魅力的な設定にあふれています。

人工筋肉でできた降下装備『侵入鞘(イントルード・ポッド)』に始まり、角膜に直接貼り付けるウェアラブルコンピュータ『オルタナ』、痛覚を認識しながら痛いと感じない『痛覚マスキング』など、近未来的な技術やガジェットが散見されます。

細部まで丁寧に描写されたこれらの設定は、すでに現実のものになっているのではないかと錯覚するほどです。

クラヴィスが選んだ結末

世界各地で大量虐殺を起こすジョン・ポールと、彼を暗殺する任務を負ったクラヴィス・シェパードは敵同士です。

しかし、二人はどこか似ている気がします。

だからこそ同じ一人の女性に惹かれたのでしょう。

クライマックスに向けて、物語は一気に加速していきます。

罪の意識が極限にまで達した時、人はどのような行動を取るのか。

地獄は頭の中にある。

私にはその言葉が少しわかる気がします。

こんな人におすすめ

  • 骨太なSF小説が好きな人
  • 戦争小説が好きな人
  • 近未来的な技術やガジェットが好きな人
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最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

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